投資に正解は存在するか:堅実な株式投資と資産形成の入門ガイド (2024)

サッカー少年に「頑張れば必ずプロになれるよ」と伝えることは、果たして「いい話」なのでしょうか。誠実な指導者ならば、おそらくそのようなことは言わないはずです。それは事実ではないからです。そして、投資について書かれた本に目を向けるなら、状況はもっとひどいのです。誰もが簡単に儲けられるような顔で話をしています。それは事実ではありません。

「第五章:必ず起こる暴落に対処する」より

書籍の概要

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本書の紹介文

私たちのような「普通の人」が成功するための現実的な方法とは

投資を「結局はギャンブルなんでしょ?」「怪しいものだから近づかないほうがいい」と考えていると、真面目な資産形成の機会を失ってしまいます。また、もう少し資産形成の話題に関心のある人であっても、「投資は難しすぎる」「何が正しくて、誰を信じたらいいのかさっぱりわからない」という印象を持っている人は多いことでしょう。

本書では「うまい儲け話がその辺に転がっているはずがない」というごく常識的な観点からスタートし、投資にまつわる基本的な疑問の解消を目指します。さらに、投資によって私たちのような「普通の人」が比較的安全に資産形成していくにはどうしたらいいのかという点を、その根拠とともに詳しく解説していきます。

副題にもあるとおり、世の中に無数に存在する投資の分野と手法の中で、本書で取り扱いたいのは株式投資です。もっと具体的には、長期保有と国際分散を前提としたインデックス投資になります。当然、そのような選択には根拠が必要であり、なぜそのような選択を行うべきなのかということが、本書で考えていきたいと思っている主要なテーマです。

自分の力で利益を手にするために

本書では、ただ「これを買っておけば大丈夫です」というだけの無責任な主張は行いません。投資が「怪しいものだ」というイメージは、部分的には事実であり、あなたが行く先には無数の罠と落とし穴が存在しています。誰かが投資で一儲けしようと思っているとき、その反対側にいるのは、その人の欲と願望を利用して一儲けしてやろうと考えている別の人たちです。

さきほど「誰を信じたらいいのか」という疑問が出てきましたが、これに端的に答えれば「自分で調べて、自分の頭で考えたこと以外は一切信用するな」ということになります。投資が難しいということは事実です。しかし、この仕事はやり抜く価値があります。本書はそれを手助けするために書かれました。

あなたが合理的なやり方で投資を始めたなら、将来的には自分の年収の額面を大きく超えるような利益を手にすることが期待できます。さらに、ここには特殊なセンスや幸運といったものを想定していません。昼間は会社などで仕事をしている、ごく普通の社会人が行える方法が存在します。これを可能な限りわかりやすい言葉で説明し、読者のみなさん自身の手で使える道具として受け取ってもらうことが本書の目的です。

利益を手に入れたあとに行うべきこと

本書は投資の専門的な知識をお伝えすることを第一の目的としていますが、本当のことを言えば、金銭的利益の最大化は最終目的ではありません。

誰でも知っているとおり、人が一生のうちに得られるお金、そして使えるお金は限られています。通常、お金とはあなた自身の毎日の時間とエネルギーを引き換えにする形でのみ得られるものであり、このための資源は常に有限だからです。そして、お金とは単なる道具なので、これを追い求めることに忙殺されたところで、あなた自身が幸せになるわけでもありません。つまり、金銭的利益の最大化とあなた自身の人生の意味の追求は両立しないということです。

専門的な意味で正しい投資の方法を身につけることができたとき、その思考の習慣と能力は、不確実さと複雑さに満ちたあなた自身の人生の課題にも応用することができます。本書で投資についての客観的な知識の解説がすべて終わったあと、最後の章で取り上げるテーマは「難しい現実を理解し、それを乗り越え、自分自身にとって本当に価値のある何かを得るために、私たちはどうすればいいのか」というものです。

本書の内容

目次と各章の概要

  • はじめに:本書の目的 …… 本書が誰に対して書かれていて、あなたに何を説明したいと思っているのか
  • 第一章:「投資する」とは実際には何をすることなのか …… 投資でお金が得られる理由を理解する。なぜ投資は危ないと言われるのか、上がり下がりする株価チャートの正体はいったい何なのか
  • 第二章:投資でがっかりするための確実な方法たち …… 世の中で話題になる投資手法は本当に儲かるのか。未来が予測できるなどということはあるのか。常識的な理屈に基づいて、投資の世界に存在する誘惑と幻想を排除する
  • 第三章:資本主義全体の成長に賭ける …… 経済学者による研究データを参照して、株式インデックスへの長期分散投資という解答を提示する。さらに、予測に基づいた投資対象の選別をやめるという発想の転換を行う
  • 第四章:商品の選択 …… ネット証券の画面を開いて、ずらりと出てきた商品の一覧に迷わないために。適切な金融商品をどのように検索して、何をチェックしながら選んでいけばいいのか
  • 第五章:必ず起こる暴落に対処する …… 社会人として働きながら、投資家としてのマインドに切り替える。株式投資が難しいと言われることの本当の意味とは。これからあなたを襲うはずの心理的な動揺と、その対処のためのヒント
  • 第六章:リターンの向上を狙う …… ここまで考えてきた投資手法に改善点はあるのか。リスクという概念をより正確に理解し、データの参照方法を身につける。その上で、第三章で採用した基本的な方針に例外があるのかを探る
  • 第七章:投資と生活を結びつける …… お金を扱う以上、投資と日常生活は切り離せない。どこから元手を用意して、それをどう振り分けるべきか。長い人生の中でしっかり資産形成をしていくために、あなたが考えていくべきこと
  • 第八章:投資的思考とあなたの人生 …… 結局のところ、私たちが投資を行うのは何のためなのか。投資家として、不確実で難しい現実に対処する能力を身につけることができたなら、それはその人自身の人生を豊かにしていくためにも役立てることができる
  • おわりに:全体のおさらい …… 本書全体の復習と結び。最後に、あなたに覚えておいてほしいこと

※最初の4つの章は、著者のnoteにて「試し読み版」として公開されています。章タイトルのリンクからどうぞ。

ページサンプル

その他の情報

書籍データ

  • 初版発行日:2024年6月12日
  • ISBN:979-8328278232
  • 体裁:ペーパーバック、A5(148×210mm)、332ページ
  • 定価
  • 書籍コード(シロイブックス):SR-002

関連コンテンツ

制作の裏話を書いた「制作ノート」の記事がnoteで公開中です。

本文からいくつかの引用

投資の専門的な知識について解説した、第七章までの内容から:

ローソク足や折れ線グラフといった株価チャートを見て、「この低いところで買って、高いところで売ればいいんでしょ」と言われることがあります。第一章でも触れたとおり、これは投資というもののごく一般的なイメージです。つまり、投資によって利益を得るためには、何かの価格について「これから上昇しそうだ」と予測することが必要だと考えられているということです。

ここで、非常に重要なポイントが出てきます。チャートの未来は絶対に予測できません。これは「絶対」という言葉を正確に使用できる、数少ない場面のひとつです。

「なぜ未来が予測できないか」ということをわかりやすく説明するのは困難です。それは「なぜ未来が予測できると信じ込んでいるのか」ということを合理的に説明してくれる人がどこにもおらず、反論する対象が存在しないからです。もし誰かか「1+1が3ではないことがどうしても納得できないから、ちゃんと説明してくれ」と真面目な顔をして言ってきたら、そもそもどうしてそのように考えるようになったのかが想像できず、途方に暮れてしまうことでしょう。

あなたが投資に関する情報を見るとき、そこに「予測」という概念が出てきたら、もうその時点で強く疑うことが適切です。物理学者が「無限の動力を生み出す夢のエネルギーを発明しました」という永久機関のニュースを決して信じないように(これも古典的な投資詐欺です)、条件反射として身につけてください。もう少し身近な例を挙げれば、これは「レターパックで現金送れ」のようなものです。この文言を目にしたら、言われなくても「すべて詐欺です」を連想するでしょう。それと同じです。

「第二章:投資でがっかりするための確実な方法たち」

一般的には、株というのはとにかく値動きが不安定で、第二章で取り上げたFXほど極端ではないにしろ、「投資=ギャンブル的なもの」というイメージの代表格と言えます。しかし、このような見方を覆す研究が存在します。第二章までの内容では、世間に流通する投資話の根拠について疑うということをしてきましたが、第三章でこれから確認していくのは、「これが模範的な投資の方針だ」と言うために信頼してもよさそうな、ある研究データの存在についてです。

第一章で投資というものの本質を考えるために、典型的な投資方法として株式を取り上げたのは、実はこの「投資の解答」について理解していくための準備でもありました。本書の副題に「株式投資」という言葉が含まれているのも、単にそれが投資方法として一般的でとっつきやすいからという理由ではなく、世の中にいくつも存在する投資対象の中で、本当に掘り下げるべきものが株式投資だからです。ここまでにさまざまなタイプの投資の罠について説明してきたのも、読者がこの答えに至る前に、もっと刺激的に見える誘惑によって道を踏み外してしまわないためでした。

本書ではこれ以降、株式投資の話題に集中します。この章のここからは、株式という選択肢の持つ本質的な優位性と、それを十分に活かすための方法について、詳しく見ていきたいと思います。

「第三章:資本主義全体の成長に賭ける」

投資に興味を持ったとき、真っ先に考えるのは「どれくらいの儲けが出そうなのか」という点でしょう。これはプラスとして出現する数字がどの程度になるのかという視点であって、そのためにどれだけの規模の金額を運用する必要があるのかという点はあまり意識されていません。しかし、あなたは既に、投資家の仕事はリスクを引き受けることなのだと正しく理解しています。この重みを背負うことなしに、十分な利益を手にするということはできません。

経済に関するニュースの中で、SNS上の投稿が「市民の声」として取り上げられることがあります。そうしてまとめられている声を見てみると、日経平均株価のたった5%や10%の短期的な下落といった局面に動揺して、そのまま投資をやめてしまう人が存在することに気づきます。多くの人にとって、これは「耐えられない数字」ということになるようです。

しかし、たとえば年単位という枠で見たとき、株価指数の10%を超える変動というのは、号外や速報が出るようなニュースではまったくありません。晴れる日があれば、雨の日もあるといった程度の話です。実際、第四章で参照した過去5年間の全世界株式のリターンは、プラスもマイナスもすべて2桁の数字でした。つまり、あなたが8桁の金融資産を運用するようになったとき、評価損益の数字としては、7桁の数字が当たり前に現れるようになるということです。

かつて「+50,000」と表示されていた評価損益の欄に、「-2,500,000」と表示されるようになった日を想像してみてください。この数字こそが、あなたがこの先対峙すべき相手になります。

「第五章:必ず起こる暴落に対処する」

投資に必要な思考の習慣を人生全般の課題に当てはめて考えた、第八章の内容から:

投資は欲と願望の世界でもありますが、基本的には冷たい数字とデータによって動いています。ここでは、生身の人間の社会でよく見られるような「そこをなんとかなりませんか」という交渉の余地が一切ありません。しかし、これが私たちにとって特殊な状況であるかというと、実はそうではないことに気づきます。自分の思いどおりにならないというのは、社会や人間関係の中ではむしろ普通のことです。

片想いというのはありふれた現象ですね。普通に恋愛的な意味で使われることもありますし、友人関係でも、お互いの求める関係の深さや形が異なることは珍しくありません。憧れの会社に就職や転職を希望するときも、相手が応えてくれるとは限らない(応えてくれないことのほうが多い)ので、これも似たようなものです。

親しい友人や家族など、ほんのわずかな人だけが、あなたの心の奥にあるものを気にかけてくれます。これを仕事仲間やお店の店員さんに要求することはできません。社会生活の中で、相手に対して人としての気づかいや配慮を持って接するのは当たり前のことですが、これはあくまで「上司と部下」「店員と客」といった役割とルールの中で何かを行うという関係になっています。そこには、個人的なわがままによって相手を振り回したりすることは許可されていないという、一定のラインが存在します。

あなたが職場の上司の個人的な悲しみや孤独を気にかけていないように、他の人たちもあなたのことをそこまで気にかけてはいません。ほとんどの人間はそれなりに親切なので、世間を冷淡なものだと思う必要はありませんが、願望が通じないのは普通のことなのだという認識は持っておくべきです。「わがままで困った上司」にNGが出されるのは当然のことなので、私たち自身も、そのように振る舞うわけにはいきません。

現実の世界にどれほどがっかりさせられたとしても、私たちはその世界に向き合い、それに対処していく必要があります。これがうまくできるようになれば、何か期待どおりにいかなかった場合にすぐに落ち込んだり、身近な誰かや世間一般というものに対して、簡単に腹を立たりすることはなくなるでしょう。このような心の習慣は、あなた自身の幸せと内的な平穏に繋がるはずです。

「第八章:投資的思考とあなたの人生」

電車で通勤している読者の方は、意識している・していないに関わらず、転職を支援するサービスの車内広告を毎日のように目にしていることでしょう。こうした広告は「辞めればすべてがよくなる」と言わんばかりで、仕事で疲れた日の帰りの電車の中で「あなたは正当に評価されていない」「もっと素晴らしい場所が他にある」という誘惑を投げかけてきます。

誰もが一発逆転の近道があると信じているようです。しかし、ひとつの事柄によってすべてがよくなるというのは幻想です。世界はそのように単純にできていません。これは職場の不満についてもそうだし、「いつか運命の人に出逢えたら」とか「子どもに恵まれたら」といったことも同じです。魔法のようにすべてを解決してくれる薬はどこにも存在しないのですが、それが存在するはずだという願望は、いい商売になります。転職サイトの車内広告のすぐ横には、ブライダル関係の広告があるでしょう。これも私たちの人生の満たされなさや、閉塞感のすべてを解決してくれる夢のひとつです。

IT関係の仕事をしている人はご存知かもしれませんが、ソフトウェア工学の世界には「銀の弾丸はない」という有名な言葉があります。これはヨーロッパなどの伝承において、狼男や吸血鬼といった魔物は銀に弱いとされており、通常の銃などの武器では効果がない場合でも、銀の弾丸を使用すれば倒せるという話が元になったものです。これが転じて、銀の弾丸とは「解決が困難な課題も、これさえあれば一撃で片付けられる」という魔法の解決策のことを指しています。

銀の弾丸は存在しません。怪しい儲け話の数々については第二章で考えてきましたし、第三章で本書の解答として提示したインデックス投資についても、それが簡単ですぐさま利益が出るものだとは決して言いませんでした。ないものを信じれば、その期待が裏切られることは約束されています。あるはずのものが得れないとき、人は自分が被害者のように考えますが、あなたにそれが与えられないのは、単純に「そんなものは最初からどこにも存在していないから」という理由によります。そのような幻想を捨てましょう。

「愚痴っぽくて不満ばかりの人間が好きだ」などという人がどこにいるでしょうか。あなた自身の幸せとよりよい人生のために、このような現実の理解は必要なことです。

「第八章:投資的思考とあなたの人生」